企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。一般原則の一にあたる「真実性の原則」は、企業会計原則の中でも頂点にくる原則で、不正や不当な利益操作などのない、真実な決算書(財務諸表)の作成を要請しています。この、真実性の原則において「真実」とされるのは相対的真実です。企業会計では、会計処理について複数の方法が認められているケースがありますが、時代の流れによって会計の目的などは変化していく可能性があります。そのため、真実性の原則では、絶対的な1つの真実は追求されていません。1つの真実ではなく、企業会計基準に合った適切な真実、つまり相対的真実が求められています。相対的な真実の例としてあげられるのが、固定資産の減価償却法の選択(定額法や定率法など)、固定資産の耐用期間の見積もりなどです。固定資産の例で見るように、企業は状況に合わせて減価償却方法などの選択、資産の状況にあった減価償却ができます。たとえ、同じ固定資産において、企業ごとに違う減価償却が行われていたとしても、真実性の原則における適切な真実を満たしているのであれば、その会計処理は認められることになります。
2 正規の簿記の原則
単式簿記と複式簿記とは?
簿記とは、「特定の経済主体の活動を、貨幣単位といった一定のルールに従って帳簿に記録する手続き」であり、報告書(決算書等)を作成するための技術です。記帳方式により、「単式簿記」と「複式簿記」に区別されます。単式簿記は、経済取引の記帳を現金の収入・支出として一面的に行う簿記の手法(官庁会計)であり、複式簿記は、経済取引の記帳を借方と貸方に分けて二面的に行う簿記の手法(企業会計)で、複式簿記ではストック情報(資産・負債)の総体の一覧的把握が可能となります。また、複式簿記では、経済取引の記帳と同時に、固定資産台帳への記録も行います。各地方公共団体では、従前から公有財産台帳等によって公有財産を現物管理してきました。しかし、固定資産台帳では金額情報も併せて記録することとなります。金額情報を記録し、会計年度末に資産と負債を一覧表に集約する貸借対照表を作成すると、対象項目の貸借対照表の残高と固定資産台帳の残高が一致することになります。それぞれを照合することで、いずれかの間違いを探すことができる検証機能の効果も持ちます。したがって、複式簿記は「ストック情報の把握」、「検証機能」の意義を持っています。単式簿記・現金主義と複式簿記・発生主義の違いは、例えば、自動車を100万円で購入するケースを考えてみると、家計簿では、単に「100万円の支出」とだけ書くことになります。家計簿(官庁会計)は現金の増減だけを記録するものであるためです。「現金の増減」についてだけ着目するということから「単式簿記」、「現金主義」といわれます。企業会計では、「自動車という資産」の増加と「現金という負債」の減少の「両方」を記録します。これを複式簿記といい、また、「現金」ではなく「債権・債務」に着目して、費用や収益を計上することを発生主義といいます。
3 資本取引・損益取引区分の原則
4 明瞭性の原則
・重要な会計方針の開示
・重要な後発事象の開示
火災などによる重大な損害の発生、企業の合併や重大な営業の譲渡など、貸借対照表日後発生の事象で、次期以後に重大な影響のある事象の注意を要請している。
このほか、明瞭性の原則に基づいているのが、損益計算書の営業損益区分などの区分表示、1年基準を適用した貸借対照表の科目の分類、決算書の総額表示といったものです。
5 継続性の原則
6 保守主義の原則
7 単一性の原則
会計とは、「経済主体が行う取引を認識(いつ記録するか)・測定(いくらで記録するか)した上で、帳簿に記録し、報告書を作成する一連の手続き」を指しますが、取引の認識基準の考え方には「現金主義会計」と「発生主義会計」があります。現金主義会計は、現金の収支に着目した会計処理原則(官庁会計)、現金の収支という客観的な情報に基づくため、公金の適正な出納管理に資することができます。しかし、現金支出を伴わないコスト(減価償却費、退職手当引当金等)が把握できません。発生主義会計は、経済事象の発生に着目した会計処理原則(企業会計)、現金支出を伴わないコスト(減価償却費、退職手当引当金等)が把握できます。投資損失引当金といった主観的な見積りによる会計処理も含まます。
区 分 | 収入の計上 | 支出の計上 |
現金主義 | 現金の収入 | 現金の支出 |
発生主義 | 収入の発生事実 | 支出の発生事実 |
取 引 区 分 | 実現主義の考え方 |
管理費等の収入計上 | 管理費等は、マンション管理に要する費用を組合員全員で負担するため、管理組合に納めるものである。組合員一人ひとりが管理組合に納めた管理費等に応じたサービスの提供を受けていなくとも組合員であれば納める義務が生ずる。このため、管理組合の収入として計上すべき期間の到来とともに収入として計上する。 |
委託業務費等の支出計上 | 委託業務費等は、発生主義の原則に基づき、対価の支払いの有無によらずサービスの提供を受けた(要支払額)を支出に計上する。 |
企業会計原則を守らないとどうなる?